【運送業向け】2025年法改正対応マニュアル|貨物自動車運送事業法と新ルールの全貌

2025年6月11日、国会で成立し公布された「貨物自動車運送事業法の一部を改正する法律」および関連法(「貨物自動車運送事業の適正化のための体制の整備等の推進に関する法律」)。
いわゆる「トラック新法」として報じられ、物流業界全体に大きな変革をもたらす内容となっています。今回は、その改正内容と背景、今後の実務への影響をわかりやすく解説します。


改正の背景

  • 2024年の改善基準告示物流2024年問題を受け、ドライバー不足や長時間労働の是正が急務に。
  • 荷主による「無理な発注」や過度な低運賃競争、下請けの多重構造による中抜き問題が長年の課題でした。
  • 今回の改正は「まじめな事業者が報われる構造」に転換し、持続可能な物流を目指すことが目的です。

改正の主なポイント

1. 許可の**更新制(5年ごと)**の導入

  • 従来:一度許可を取れば終身有効。
  • 改正後:5年ごとに更新が必要に。
  • 更新審査では「安全管理体制」「法令遵守状況」「財務の健全性」などがチェックされる。
    👉 信用のない事業者は退場を迫られる一方、健全経営をしている事業者には信頼性アップのチャンス。

2. 適正原価制度の創設

  • 国土交通大臣が「適正原価」を告示。
  • 運送事業者は、この原価を下回る運賃で受託してはならない。
  • 低運賃競争を防ぎ、ドライバーの賃金改善にもつながる狙い。
    👉 従来の「標準的運賃制度」は廃止へ。

3. 多重下請けの制限

  • 元請からの再委託は原則「2次下請けまで」とする努力義務。
  • 3次請け以降の「多重構造」は排除の方向。
    👉 中抜き防止と透明性確保が目的。

4. 白トラ対策と荷主責任

  • 無許可事業者(いわゆる「白トラ」)への委託を禁止。
  • 違反した荷主にも罰則が科される仕組み。
    👉 荷主も「委託先の許可確認」が義務になる。

5. 契約の透明化義務

  • 契約時に「役務内容・対価・附帯業務・燃料サーチャージ・有料道路利用料」などを明記した書面交付が必須。
  • その記録を一定期間保存する義務あり。
    👉 既に一部は2025年4月から先行施行済み

6. 実運送体制管理簿の作成・保存

  • 元請は、実際に運送を行う下請業者の名称等をまとめた管理簿を作成・保存する義務。
    👉 再委託構造を「見える化」して、責任所在を明確化。

7. 労働者の処遇改善義務

  • ドライバーの「知識・技能・能力」に応じた公正な評価と処遇を確保することを義務付け。
  • 賃金制度や評価制度の見直しが求められる。

施行スケジュール

  • 短期施行(公布から1年以内)
    • 書面交付義務
    • 実運送体制管理簿の作成
    • 下請け次数制限(努力義務)
    • 白トラ対策の一部
  • 中期施行(公布から3年以内)
    • 許可更新制
    • 適正原価制度
    • 労働者の処遇確保義務

👉 実務対応は「1年以内」と「3年以内」に分かれており、早めの準備が重要です。


今後の実務への影響

  1. 行政書士・社労士・税理士への相談増
    許可更新や処遇改善で、士業への相談が増加する可能性大。
  2. 荷主側の意識改革
    価格交渉の際に「適正原価」が基準となり、荷主が強引に安値で発注することが難しくなる。
  3. システム対応の必要性
    契約書の作成・保存、体制管理簿の作成は紙ベースでは限界。
    → Googleフォームやクラウド管理での効率化が必須。

まとめ

今回の改正は「物流業界の構造を変える大改革」です。
許可更新制・適正原価・下請け制限・白トラ対策・労働者の処遇改善。
これらはすべて、持続可能な物流をつくるための仕組みです。

企業にとっては「準備が早いほど有利」。
法令対応をただの負担と捉えるのではなく、信頼性向上・社員定着・荷主との健全な関係づくりにつなげていきましょう。


✅ 参考元:

  • 国土交通省「貨物自動車運送事業法改正関連 Q&A」
  • e-Gov 法令データベース(改正法条文)
  • 経済産業省・厚労省関連通知

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